なぜ、人材育成は必要なのか?

倉庫現場作業者リーダーを 人材から人財へ

なぜ、人材育成は必要なのか?

業界全体を成長させる為には、
次世代を担う人材を育成する必要があるのです。

物流現場作業者に対して、
長年、人材育成を行うという習慣はありませんでした。

その最大の理由は、
単純作業、誰にでも出来る作業という認識により、
人材育成を行う必要が無いと考えられてきたからです。

他の業界においても、
人材育成を行う必要性・重要性を認識したのは、
つい最近の事ではないででしょうか?

人材育成を行うきっかけともなったのが、
大手企業がコーチングを導入して、
目に見る成果が得られたからではないかと思うのです。

もちろん、それまでにも、
人材育成を行う大手企業は多くありましたが、
日本の職人文化といいますか、見て覚える、
やって覚える、盗んで身に付けるという
仕事の覚え方が主流だったのではないかと思います。

それは、言い換えると明文化がされず、
体系化がされていない事を意味します。

その為、教える人、指導する人によって、
部下の仕事の習得・理解度にバラツキが生まれてしまいます。

そのバラツキにより、
部下の成長度合い・スピードもバラついてしまいます。

もちろん、トヨタのような企業は、
早くから教育システムを構築して、
一定レベルまでは同じスピードで従業員を成長はさせていたと思います。

そんな状況の中にアメリカからコーチングが導入されました。

私も15年ほど前にコーチングを学びましたが、
当時は、コーチングのコーチと言っても、
スポーツのコーチと勘違いする人もいたぐらい、
一般の方にはコーチングは知名度が低かったです。

それが、今では、
管理職はコーチング研修を受けるのが当たり前の時代です。

また、最近は1on1を導入している企業も多くあると思います。

とはいえ、コーチングや1on1は、海外の文化のモノであり、
指示・管理される事に慣れている従業員にとっては、
なかなか馴染めないものとも言えます。

ちょっと考えてみてください。

義務教育から、
暗記を中心にした学習方法を学んできた人にとっては、
自分で考え、自分だけの意見・答えを出す事に慣れていないのです。

そんな人に自分で考え、
自分の中から答えや意見を導き出しなさいと言っても無理なのです。

コーチングの基本は、
相手の中に答えがあると言う事を前提にして、
質問や傾聴により、気づきを与えるものです。

相手の中に、問題や課題を解決する為の
知識・経験・スキルが無ければ、
どんなに質問や傾聴をしたところで、何も出てきません。

無い袖は振れないのです。

その為に、コーチングと対となるティーチングがあるのです。

コーチングにより成果が出ている企業があるからと言って、
知識・経験・スキル不足の従業員に対してコーチングを行っても、
相手にとっては拷問や苦痛・プレッシャーでしかありません。

こう考えると人材育成を行う為には、
明確な道筋・プロセスを構築する必要があります。

ただ、その為には、時間とお金と労力が必要です。

そんな悠長な事は出来ないと考えているのが、
多くの企業の本音ではないでしょうか?

だから、即戦力の人を募集しているのだと思います。

では、即戦力となる人を育てているのは、誰なのでしょうか?

これから、若い人が減っていき、若い労働力が減っていきます。

多くの企業が、人材育成の手間を省き、
即戦力の人を求めていったら、
近い将来、即戦力の人のレベルも
どんどん下がっていってしまいます。

もしかしたら、
即戦力=与えられた(指示された)仕事を忠実に行えるという
認識になってしまう可能性もあるかもしれません。

そうなったら、日本経済は低迷どころか、
世界から見放される可能性すらあります。

また、海外の方が、人材育成に関しては積極的に行っているので、
学習意欲が高く、向上心が高い、若い人は、海外へ出ていくか、
外資系企業へ流れる可能性があります。

そうなってしまえば、
即戦力の人を求めて、手に入らない事になってしまします。

私が参加している勉強会で、
リッツ・カールトンホテル 元日本支社長の高野登さんの
高野登 想像力みがき塾』の中で、
「企業はもう社員を育てない セルフマネジメントの重要性 
人生のリーダーは自分だけ」というお話がありました。

まさに、その通りだと思います。

決定的に日本人に不足しているのが、
「セルフマネジメントの重要性 人生のリーダーは自分だけ」
という認識でしょう。

この二つは、学校では学ぶ事は出来ません。

社会に出て、
様々な経験をするうちに気が付いてくる
ものではないかとも思います。

セルフマネジメントは、言葉は違えども、
戦後の復興の時代に生きていた人たちは、
無意識に行っていたのではないかと思います。

そうでなくては、
お金も物も少ない時代に生き延びる事は出来なかったでしょう。

また「人生のリーダーは自分だけ」という認識は、
会社に依存していては気づく事は到底出来ません。

高度経済成長を経て、良くも悪くも安定した経済において、
会社に帰属し、依存して生活を丸投げしていては、
到底、「人生のリーダーは自分だけ」などと言い切れるわけもなく、
「人生のリーダーは会社だけ」と思い込んでいるのでしょう。

この思い込みは、
行動範囲や交友関係が会社だけの時代に生きた人に多いと思います。

今の時代、SNSの普及で、行動範囲も交友関係も、
昔と比べるのも馬鹿らしくなるほど広くなっています。

私自身、高野登さんのセミナーの参加をして、
そのあとは、Facebookで交流を細々く続ける事が出来たのです。

普通、物流現場の作業者が、
社長クラスの人と繋がりを持つことは難しいと思います。

その他にも外資系企業のアジア統括代表の方とも
Facebookで細々と交流を持つ事が出来ています。

行動範囲や交友関係が広くなると、どうなるでしょうか?

答えは簡単です。

会社と言う狭い世界から解放されて、
自分だけの世界が広がり、自分の人生を歩み出す事が出来るのです。

自分の人生を歩むためには、
誰かに頼るのではなく、自分で決断し、行動する必要が出てきます。

その結果、「人生のリーダーは自分だけ」という認識に変わってくるのです。

私の場合、今の様にSNSが普及する前の時代、
メーリングリストと呼ばれるものが流行っていた時に、
既にオフ会に参加をして、様々な人たちと交流をしていました。

当時は、本名を名乗るのではなく、
ハンドル名を名乗るのが主流だったので、
今のように本名を知らない人たちが多くいました。

今思えば、よくそんな場所に参加をしたなと思います。

また、私自身で、
インターネットを通じてメンバーを募集して、
少人数ならドライブやBBQなどをする
遊びのサークルを主宰していました。

また、コーチングを学び始めたのは、
会社以外の多くの人たちと交流する事で、
今のままで大丈夫なのか、
このままでいいのかと言った漠然とした不安になり、
「自分の人生の主人公になる」
と言うキャッチコピーに惹かれたからです。

多くの企業は、社員を育てる必要性を感じていながらも、
社員を育てる予算も時間も人員も無いのが現状でしょう。

とくに中小企業にとっては、
「社員を育てる=仕事の手順を覚えさせる、ミスをさせない」
という認識に変わってしまっているのではないでしょうか?

その代表例が物流業界です。

物流の現場の多くは、
正社員ではなく、パートやアルバイトが主流で働いています。

そうなってくると、社員を育てるという認識も薄くなって、
仕事の手順さえ覚えてもらい、
ミスのないように作業をしてもらえば、
OKという認識に変わってくるのではないかと思うのです。

とは言え、フォークリフトマンは、そういうわけにはいきません。

フォークリフトの免許は簡単に取れはしますが、
商品の破損無く、事故無く行う為には、
フォークリフトの免許を持っているだけで駄目です。

これは、車の運転と同じですね。

車の免許を取ったからと言って上手く運転できるとは限りません。

フォークリフトの場合、
扱う商品や扱うパレットによって、慣れやコツが必要です。

また、倉庫によっては、狭く、運転に気を使う場合が多々あります。

トラックへの積み下ろしの場合は、
荷物の積み下ろしをすればよいのではなく、
ドライバーとのコミュニケーションも必要となってきます。

これだけの事を、
フォークリフトの免許を取ったばかりの人に
すぐに行えというのは無理というもの。

また、フォークリフトには、リーチ式とカウンター式があり、
倉庫内であれば、多くの場合、
リーチ式が多く使われ、トラックへの積み下ろしの際は、
カウンター式が使われる場合が多くあります。

その為、フォークリフトに関して言えば、
即戦力と言っても、両方を使える人となると若干、
限られてしまう場合があります。

私は、両方とも乗れるので問題ないのですが、
リーチ式やカウンター式の片方しか乗ったがない人に
慣れないフォークリフトに乗れというのは、正直、酷というものです。

それでなくても、物流の現場は人手不足です。

若い人が入ってきません。

業界も、給料は安い、拘束時間は長い、
面白味がないなどで不人気です。

とは言え、多くの人は分かっているように、
物流はライフラインの一つであり、
エッセンシャルワーカーという位置付けです。

そんな業界において、自社で社員を育てづ、
即戦力ばかりを求め、他社の経験者を引き抜くと言う事は、
業界全体の生産性・作業効率を低下させているようなものです。

最近は、どこの業界もDXが流行りで、
自動化、ロボット化により省人化が言われています。

自動化、ロボット化を行う為には、先行投資が必要となってきます。

先行投資をしたからには、投資分を回収する必要があります。

回収できる予定がない限り、先行投資は自滅を招くようなものです。

その為、中小の会社は、現状維持を保っているのです。

そんな会社が、
10年、15年と経営が成り立つとは思えないので、
万物流転の法則により、衰退、倒産の流れになっていくのは
自明の理だとは思いますが。

とは言え、業界全体を成長させる為には、
次世代を担う人材を育成する必要があるのです。

そうでなくては、衰退の一途を辿るしかないのです。

その危機に直面しているのが、物流業界なのです。

現状、トラックドライバー不足ばかり注目されていますが、
今後、もっと広範囲に作業員不足が言われることでしょう。

メディアで紹介されている物流倉庫を見ると、
自動化が進んで、省人化が出来ているので、
作業員不足はないのでは?と思う人も多くいると思います。

メディアの映像をよく見てもらうと分かるのですが
扱っている商品は小物ばかりです。

もっと大きな商品を扱う場合は、
まだまだ、作業員が手作業で行っているのです。

また、トラックへの荷物の積み下ろしも、
パレット化が進んではいるものの、それほど普及はしていません。

なので、今だに手積み、手下ろしの状態です。

しかも、給料は、他業種よりも低い為、不人気業界まっしぐらです。

そんな業界を根本から変える為にも、
新しい価値観、考えを持っている若者を入れてしっかりと
育成する事が必要不可欠なんです。

その為には、藤澤武夫氏の
「経営者とは、一歩先を照らし、二歩先を語り、三歩先を見つめるものだ。」
と言う言葉通り、業界全体が目の前の問題解決だけに注視するのではなく、
二歩、三歩先を見据えて動いていく必要があるのです。

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