理想のチームプレイヤー
チームビルディングと言う言葉をよく聞きます。
ところが、そのチームを構成する
プレイヤーについてはあまり話題になりません。
何故でしょうか?
簡単に言ってしまうと、プレイヤーには、
一人ひとり個性があり、チームビルディングではなく、
人材育成と言う部類に入るからではないでしょうか?
では、理想のチームプレーヤーに必要な要素とは何でしょうか?
日本の場合、昔から団体行動を重要視してきました。
団体行動をする上で大切な事と言えば、
ルールを守り、周りの人達と同じ行動すると教え方をされてきました。
これは、学校などのように同じ考えや
同じ教育を受けている人たちに対しては有効かもしれません。
ところが、社会に出て、会社に勤めだすと、
様々な考えや価値観を持った人たちと働き、
一人ひとり、様々な言い分があったりします。
そうなってくると、会社で決められたルールを守ると言う
1つの行動指針だけでは、
チームとして柔軟に対応する事が出来なくなります。
にも関わらず、チームビルディングのみを重要視しています。
では、チームとして機能して、
成果を出すチームプレイヤーに必要なのは、どんな事でしょうか?
その事について書かれているのが、
書籍「理想のチームプレーヤー 成功する
組織のメンバーに欠かせない要素を知り、
成長・採用・育成に活かす方法 」[ 著者:パトリック・レンシオーニ ]です。
この書籍には、理想のチームプレイヤーに必要な
3つの美徳(要素)として、
謙虚、ハングリー、スマートについて書かれています。
「謙虚」
過剰なエゴや上下関係にこだわりがなく、
周りの貢献はすぐに気づいて讃え、
自分への注目を集めることには腰が重い、成果は分かち合い、
自分よりチームを強調し、個人ではなく全体の成功と考える。
「ハングリー」
常に今以上を求めている。
もっとたくさんのことをしたい。
もっと学びたい。もっと責任のある仕事をしたい。
自分の中に動機があり、
勤勉で、次のステップへ行けるチャンスを考えている。
「スマート」
相手に対してどのような反応をして、何を言い、
何を言うべきでないかを心得ていて、常識的に人と接する行動をする。
相手に気を払って適切に振る舞う。
分かりやすく言えば、おもてなしの心で相手に接する。
この3つの言葉の「謙虚」以外の「ハングリー」、
「スマート」は、アメリカらしい言葉ではないかと思います。
ただ、この3つの言葉の意味を考えると、
日本人も昔は持っていたはずなのです。
相手の事を尊重し、向上心が高く、熱意を持って仕事に取り組み、
一緒に働く仲間の事を思いやり、
一丸となって高度経済成長を生み出し、戦後から一気に復旧したのです。
それが、海外からの個人主義、成果主義といった考えが入ってきて、
表面上の事だけしか見ず、自己中心的な個人主義、
成果主義が一時期、横行してしまった結果、チームプレイヤーとして、
良い部分を失ってしまった気がします。
どの業界もチームプレー、人材・人財育成の重要性に気づいて、
さまざまな行動に移してきています。
では、物流の現場は、どうでしょうか?
物流の現場作業は、1人で黙々と行う作業が多くあります。
では、チームプレーとは無縁なのでしょうか?
倉庫作業を簡単に分けると
「荷受け作業」、「格納・入庫作業」、「ピッキン作業」、
「積み込み作業」に分けられます。
言うなれば、作業別のチームに分かれているのと同じです。
なので、チームプレイヤーとしての3つの美徳と言うものが必要となってきます。
私が今まで働いてきた倉庫現場で言えば、
3つのうち「謙虚」、「スマート」に関しては、
身に付けている人が多いのではないかと感じます。
ただ一番身に付いていないのが、「ハングリー」なのです。
倉庫作業の多くは、単純作業と見られているだけでなく、
1種の閉鎖空間で行っているため、
誰かのために作業を行っていると言う認識が薄くもあります。
例えば、宅配便では、ラストワンマイルと言われるように、
お客様に直接荷物をお届けすると言う誰かのために
行っていると言う意識を強く持つことができます。
ところが、倉庫内の作業においては、
淡々と、黙々と毎日同じ作業を、同じ人たちと行っているので、
誰かのために行っていると言う意識が薄くもあります。
そのため、仕事に対して、
目的意識を持って熱意を持って行う事が難しくもあります。
わかりやすい逸話で言えば、
イソップ逸話の「3人のレンガ職人」があります。
このイソップ逸話は、同じような作業であっても、
作業をする人の気持ちによって、作業を行う目的の意味合いが変わってきます。
これと同じ様に閉鎖された倉庫作業であっても、
目的意識を変える事で、熱意を持って作業をする事が出来る様になります。
ただ、それを行うためには、現場のリーダー自身が、
模範を示し、行動し続ける必要があります。
リーダーであるからには、謙虚、ハングリー、スマートを
すべてをバランスよく持っている必要があります。
ただ、物流現場は、
何かを学ぶと言う意識が薄いと言う状況下でもあります。
その為、ハングリーが欠けているリーダーも多くいます。
向上心を持ち、勤勉で、熱意を持って仕事に取り組むには、
リーダー自身で、仕事を行う目的意識を明確にする必要がありす。
何の為に、今の仕事を行うのか?
誰の為に目の前の仕事を行うのか?
今の仕事を行う先に何を得たいのか?
言うなれば、仕事を通して、
自分の将来のビジョンを明確に持っている必要があります。
それが、仕事を行う動機となり、活力となり、
向上心が生まれ、勤勉になり、
熱意を持って仕事に取り組む事が出来る様になります。
端的に言ってしまえば、倉庫作業者には、
仕事を通して、実現したい将来のビジョンを描けていないのです。
日本の会社に勤めていると、自分の将来のビジョンとか、
将来、実現したい事と言った事より、会社の業務を重要視している気がします。
これは、古き良き日本企業の会社は家族。
会社が成長・発展すれば、従業員の給料も上がり、
生活が豊かになるという幻想が今だに根付いているからではないかと思います。
アメリカは、一人ひとり、自分のミッション・使命を明確に持ち、
会社のミッション・使命と擦り合わせ、働く会社を決めている気がします。
日本の会社で働いている人も、自分の将来のビジョン・実現したい事と
会社のミッション・使命・理念が合っている人ほど、
向上心を持ち、勤勉で、熱意を持って、生き生きと仕事をしているはずです。
倉庫作業者においては、まず、この部分が違うのです。
与えられた業務だから、配属先が倉庫業務だから、
人間関係に疲れたから、営業ノルマが嫌になったからなど、
外的要因だったり、内向きの動機で倉庫作業に就ている場合が多々あります。
私自身、もともと建築関係の会社へ新入社員として入社しました。
ただ、仕事が合わないと言うか、
何をどうすればよく分からない状態の中、仕事をなかなか覚えられず、
居場所を無くし、安易に転職をしました。
転職先として、中小企業の包装資材の製造メーカーの倉庫の仕事でした。
小さい会社だからこそ、
営業や製造計画の担当者や協力業者の人達から、いろいろな事を学びました。
また、2トントラックで名古屋市内の配達もしたりしました。
だからこそだと思うのですが、
倉庫の役割りの重要性と会社の経営に密接に関係する事を実感しました。
そう言った経験が有ったからこそ、
私の場合で言えば、倉庫作業において、熱意を持って作業をする目的は、
一緒に働く人たちが、作業をしやすく、
安全に働けて、精神的プレッシャーを減らすと言うものでした。
具体的には、倉庫内のピッキング作業者のにおいては、
整理整頓をしっかりと行い、
ピッキングする商品をわかりやすくするだけでなく、
作業導線の効率を考えることで、作業者の移動距離の短縮なども行います。
これらの事を行う為には、作業手順を覚えれば出来るものではありません。
例えば、倉庫内の整理整頓を行う為には、行う時間を確保する必要があります。
では、どうやって確保をするのか?
そこには、時間管理を学ぶ必要があります。
もちろん、時間管理だけを学ぶだけではダメです。
繁忙期、閑散期と言った倉庫内の状況に応じて、
レイアウトを変えたり、ロケーション変更を行う必要も出てきます。
何を、どこに変更するのか、
作業動線や安全性も考慮して考える必要が出てきます。
もちろん、1人で、これらを行うのは、
無理なので、他の人との目的・目標を共有し、計画を立てる必要があります。
そうなってくるとファシリテーションのスキルも必要となってきます。
整理整頓を行う一つをとっても、学ぶ事、行う事は山のように出てきます。
こうなってくると、
ハングリーが欠けている人にとっては、プレッシャーしかありません。
だからこそ、
仕事の先に自分の実現したい事、将来のビジョンが必要不可欠になってきます。
それを描けていない人にとっては、ハングリーを身に付ける事は無理とも言えます。
だからと言って、経営者としては、
仕事に対して勤勉で、向上心を持ち、熱意を持って働いてもらわないと困ります。
この部分を当事者任せにしてきたのが、倉庫現場ではないかと感じるのです。
倉庫作業者は、勝手に成長しないのです。
成長してもらうには、道筋を照らす必要があるのです。
経営者の中には、そんな事は当事者の問題であって、
会社側が行うものではないと突っぱねる人もいるでしょう。
ただ、そんな人を採用したのは、会社の採用担当者なのです。
もっと言ってしまえば、採用担当者を育てたのも経営者なのです。
すべての責任は、経営者にあるのです。
理想のチームプレイヤーを作る事が出来るのは、経営者の意思決定次第なのです。