倉庫現場を変革するために必要なのは「危機感」

物流現場の現状と改善の必要性

物流の現場では、行動しなければ何も分からず、何も変えることができません。

しかし、現状を見ていると、未知だからこそ行動を起こさない、変化を避ける姿勢が広がっているように感じます。
現場が問題なく動いているからと楽観的になり、その結果、物流倉庫現場の進化が止まっているのではないでしょうか。

例えば、いまだにFAXが使われていたり、ピッキングリストが紙のままであるという現状を見ると、技術導入に対する抵抗感が目に見えて分かります。
こうした技術に対して消極的な態度は、物流の競争力を低下させ、他の業界に遅れを取る原因になっています。
もし、このまま進化を怠れば、業務効率は向上せず、コストが増大し、最終的には顧客の期待に応えられなくなってしまうリスクが高まります。

技術導入に消極的な姿勢は、物流業界が効率化のチャンスを逃す大きな要因となっています。
例えば、ハンディーターミナル(小型の携帯端末)を使ったピッキングや倉庫管理システム(WMS)を導入すれば、作業の効率が大幅に向上します。
具体的には、ハンディーターミナルを使ったピッキングによって、ミスの削減、作業者の精神的な負担削減、ピッキング時間が短縮されるなどの成果が期待できます。
それにもかかわらず、こうした技術を採用しないことで、現場では依然として手作業に頼っており、他の業界に比べてデジタル化が遅れ、結果として、低い生産性(作業効率)、コスト面やスピード面で遅れをとっています。

経営陣や現場リーダーが楽観的な態度を取っていても、現場で働く作業者こそが真に危機感を持つべきです。
なぜなら、最前線で業務を実行している彼らの意識や行動こそが倉庫現場の作業改善、作業効率を左右するからです。
どんなに技術が進化して、経営陣が新しいシステム、設備の導入に積極的でも、現場の意識改革が伴わなければ、改善の取り組みは無駄に終わってしまいます。

例えば、貸し切りトラックの出発時間や路線業者の集荷時間を守ることは物流を円滑に行う上で必要最低限のことです。
しかし、「少し遅れても問題ない」という楽観的な考えが広がると、現場の危機感は薄れます。

物流現場の課題と危機感不足

危機感こそが、現場を変革し、効率化を促進する原動力になるはずです。
現場での時間管理は、荷主、顧客、物流の信用を守るためにも極めて重要であり、一人一人がその意識を持つことで、全体の生産性を高めることができるのです。

危機感の不足は、作業者の高齢化とも密接に関連しているように感じます。
経験を積むことで「これぐらいは大丈夫」という経験からくる安心感が強まり、新しい変化を受け入れることが難しくなる場合があります。
長年の経験によって安定した仕事ができる一方で、現状に満足し、改善の必要性を感じないリスクがあるのです。
また、新しい技術やシステムを導入することに対して、今でも作業が滞りなく行う事が出来ているので必要ないという意識が強く、その結果、抵抗も強くなり、現場の変革が遅れてしまいます。

さらに、パートやスポットワーカーが増加したことで、物流現場における馬鹿の一つ覚えである人海戦術に頼ることが多くなり、根本から変える改善に対して必要性を感じられなくなっているのです。

また、無駄に人が多いことで1人の作業者が複数の作業を担う多能工化が進まず、現場作業の効率も改善されないままです。
人海戦術は短期的には効果的かもしれません。
しかし、長期的に見れば、作業者の成長にはつながりません。
自己成長を望む作業者にとっては、何も学べず成長できないという不満が生まれます。

また、持続可能な労働環境を作り出すことも難しくなります。
持続可能な労働環境の具体例として、作業者の負担を軽減し、労働時間を短縮し、適切な休息を確保することが重要です。
これらが欠けると、労働者への負担が増し、効率が低下する原因になります。

私自身、作業者が少ない倉庫現場で働いた経験があり。トラックの積み下ろしから、荷受け作業、出荷作業、配達、倉庫内の整理整頓まで行い、あらゆる作業を時間に追われながらこなしてきました。
その結果、常に二歩三歩先を考え、ドライバーと協力しながら仕事を進めることで、どうにか作業を回していました。
この経験から学んだのは、「全体を俯瞰する力」と「先取りする段取り」が倉庫現場作業の効率を大きく左右するということです。
特にトラックドライバーとのコミュニケーションを密にすることで、全体の作業の流れをスムーズにできることを実感しました。

危機感を持ちながら作業することで、単なる作業者ではなく現場の改善者としての意識を持つことが可能になります。
現場作業者が主体的に改善提案を行えば、倉庫現場全体の効率は飛躍的に向上します。
そのためには、現場の一人一人が「目の前の作業が全体の作業にどのように影響するか」を理解し、常に改善を考える姿勢が必要です。

若者に敬遠される倉庫現場の現実

ところが、現代の現場作業者は、こうした危機感を持つ経験が少ないのではないでしょうか。
そのため、与えられた作業だけを淡々とこなしているように見えます。
これが物流現場が「誰にでもできる単純作業、やりがいがない仕事」と見なされ、若い世代から敬遠される原因の一つとなっていると考えられます。
若者が物流業界に興味を持たない背景には、他の業界とは違い、人財育成に対しては無関心で、人に対して投資をまったく行わず、将来のキャリアデザインも不明確で、将来に対して不安しかない。
仕事に対する成果を正当に評価しない、フィードバックを貰えない、仕事が出来れば出来るほど、仕事量は増える、責任は増える。
その結果、承認欲求が満たされず、仕事に対する魅力ややりがいを感じられないという問題があります。

倉庫作業の複雑さとその実情

ハッキリ言って、物流現場の作業は決して単純作業ではありません。
倉庫現場作業は一つの巨大なパズルのようなもので、すべてのピースが正確に組み合わされる必要があります。

例えば、製造メーカーなどの構内作業であれば、生産計画に従って、荷物(商品)は、予定通りに作業現場に運搬され、作業は粛々と淡々と行わられます。
なので、AGF(自動フォークリフト)の活用が有効なのです。

ところが、一般の倉庫においては、入庫の商品の数などはある程度、分かってはいても、当日の何時に入るのか、分からない場合が多々あります。
それが1台ならいいですが、5台、8台ともなると、入ってくる荷物の量の順番によっては、荷捌き場は、荷物で溢れかえる可能性があるのです。
そうなってしまうと、荷物を下ろしたくても下ろせない、パレットに混載されえいる荷物を検品しようとしても検品出来ないという作業の停滞が生れます。
そうならない為に、下ろし方にもコツが必要なのです。
なので、新人やその日だけ来ている人には、到底、対応出来ない状態なのです。
これでも、誰にでもできる作業ですかと言いたいですね。
倉庫は、多種多様なので、すべての倉庫がこのような状況とは言いません。
ただ、こういう倉庫もあるという事なのです。

現場作業者の重要性

現場作業者の役割は極めて重要であり、最適な方法を常に考えることが求められます。
一つでもピースを間違えれば、全体の効率が低下し、トラックの出発時、顧客への納期に影響が出る可能性もあります。

「何も考えなくていい仕事」にやりがいを感じる人はいないでしょう。
物流倉庫作業は、常に考え、試行錯誤し、柔軟に対応することが求められる仕事です。
各作業者が持つ小さな工夫や判断が、結果として大きな成果につながります。
この点をもっと強調し、倉庫現場の価値を広くアピールすると同時に、現場からのアイディアや意見、不満などに真摯に向き合い、意見交換をする必要があります。
アイディアや意見、不満を聞くだけ聞いて、なにもリアクションをしないというのは、現場作業者の積極性ややりがいを奪い、その会社を見限るキッカケを作ることになります。

物流倉庫作業は、単なる肉体労働ではなく、価値ある仕事であることを社会にもっと伝えるべきです。
各作業者は次の工程を見越して行動することが求められます。
ピッキングから梱包、発送までの一連の作業を一つの流れとして捉え、それぞれの工程がうまく繋がるように全体を最適化することが、成果に大きな影響を与えます。
この視点を持つことで、作業者は自分の仕事の重要性や全体における役割りを理解し、やりがいを見出せるようになります。

さらに、物流現場では、突然のトラブルや予期せぬ出来事にも迅速に対応することが求められます。
例えば、急な出荷依頼や配送の遅延が発生した場合に、段取りをどのように変更し、限られた人員などをどう活かし、最適化するかという思考の柔軟性が不可欠です。
こうした場面でこそ、現場作業者の力量、知恵、判断力、対応力が試されます。
これらのスキルは単なる肉体労働ではなく、知恵・知識と経験・スキルに基づいた高度な判断と決断を要するものであり、ここに物流倉庫現場の真の価値があります。

ただ、問題になるのが、知識だけの作業者では、まったく役に立たないのです。
スポーツに例えると分かりやすいです。
例えば、野球で言えば、どんなにスイングの知識を詰め込んでも、必ずしも、速い球が打てるとは限りません。
なぜなら、知識はあっても身体能力が追い付かないからです。
もっと身近な例でいえば、自動車の運転は、どんなに教本を読んでも、上手くなるものではありません。
とくにミッション車(クラッチ付の車)は、慣れるのは時間とコツが必要です。
それと同じで、知識だけの作業者なんて、猫の手以上にはならないのです。
場合によっては、現場の作業効率を下げる原因となるのです。

危機感を持ち、行動し、変革を遂げる。
この姿勢こそが倉庫現場をより良くし、次世代に受け入れられる魅力的な職場へと変えていく鍵です。
この姿勢は物流現場に限らず、他の業界でも通用する普遍的な価値を持っていると考えます。

倉庫現場での経験を通じて培われる柔軟な思考や段取り力は、他の仕事でも大いに役立つと考えます。
もちろん、知識や経験は必要ですが、考え方や視点、臨機応変対応力は、応用が出来ると考えます。
また、倉庫現場での経験が、若者にとってキャリア形成として有益なものとなるような環境を整備することが求められています。

まとめ

物流業界は変革の時を迎えています。
そのためには、現場の一人一人が危機感を持ち、積極的に改善に取り組む姿勢が重要です。
現場の声に耳を傾け、それを基に新しい取り組みを導入し、物流倉庫の価値を再発見する必要があります。
楽観主義に浸るのではなく、現状を冷静に見つめ、積極的に行動することこそが、倉庫現場の未来を変える第一歩です。

この変革を進めるためには、技術の導入だけでなく、人材育成は欠かせません。
例えば、多能工化を進めるための研修や、作業効率を向上させるためのチームビルディングなど、現場の力を引き出すための先行投資が必要です。
現場作業者が一つの作業だけでなく、さまざまな役割を担えるようにすることで、現場全体の柔軟性が増し、結果として倉庫現場全体の最適化が実現できます。

物流の未来は、現場にいる全ての人々の手にかかっています。
それぞれが危機感を持ち、行動し、改善に向けて挑戦することで、倉庫現場は新たな価値を創造し、他業界に引けを取らない存在へと進化していくと考えます。


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