人材育成の主語を変える必要性

会社の都合と作業者の欲求のギャップ

一般的に、企業は人材育成を通じて効率的な作業力と業務の改善を目指します。

しかし、リーダー候補や意欲的な従業員が自分自身のキャリアや人生計画を重視するようになると、企業の利益追求だけを目的とした育成に対して難色を示すことがあります。

個々の作業者が「会社の駒」として扱われていると感じた場合、それをきっかけに彼らのモチベーションを低下させ、最終的には退職や転職を考えるきっかけを作り、我慢のレベルを越えたときに行動に移します。

これは、実際に私が何回も通ってきた道です。

倉庫現場の仕事は、終わり時間が分からない残業するのが当たり前の現場が多くあります。

なぜなら、その人の仕事量がその日の朝に決まったり、最悪の場合、昼に決まったりするからです。

なんで、作業者の人数が確保できていない場合は、確実に残業時間が伸びます。

非正規労働者のパートやスポットワーカの人たちは、契約の時間が来たら帰る事ができますが、正規雇用者の作業者の場合は、そうはいきません。

これは、倉庫現場作業者あるあるだと思います。

会社の駒として、扱われたと感じたリーダー候補や意欲的な従業員に見られる傾向であり、彼らは自分のキャリアパスや人生の目標の為に自分なりの価値観、判断基準を持っています。

なので、会社の一方的な人材育成計画に対して、それを受け入れる動機付けが出来ないとやらされ感、ストレスを感じます。

企業側はこの点を理解し、従業員の個々のニーズと目標に沿った人材育成を心掛ける必要があります。

現場作業者の現実

多くの倉庫作業者は、日々の仕事に追われる中で、将来のキャリアデザインを考えることは、ほとんどしません。

彼らの多くは「今が良ければそれでいい」という考え方を持ち、人材育成やキャリアアップに対して興味を示しません。

なので、興味をして示してもらうためには、動機づけが非常に重要になります。

また、倉庫作業はルーティン作業が多いため、作業の中で目標らしい目標を設定することができないため、仕事に対するやりがいを感じにくくあります。

ただ、現場作業者自身、仕事にやりがいを求めているかと言えば、必ずしも、そうとは限りません。

仕事に対するやりがいも人それぞれです。

仕事内容に対して、面白みを感じやりがいを感じる人もいれば、高い時給を貰えることに対してやりがいを感じる人もいるのです。

とくに非正規労働者の場合、やりがいより高い時給を求めている事が多くあります。

例えば、多少やりがいを与えてくれる倉庫現場の仕事と仕事の内容はほとんど変わらず、時給が1.5倍で、労働環境が良い倉庫現場があった場合、どちらを選ぶかは、人それぞれです。

仕事内容に興味があり、自分の成長・メリットがあれば前者の仕事を選ぶでしょうし、高い時給を求める人であれば、後者の仕事を選ぶことでしょう。

人材育成を行う場合、仕事にやりがいを与えれば受け入れてくれるなんて言うのは、会社側の単なる思い込みに過ぎません。

相手が、どのようなことを重要視して働いているか、今の仕事を選んだのかを理解したうえで、次へのステップアップの提案をしたり、人材育成プログラムを考える必要があります。

それを一律、同じ人材育成プログラムを適応していては、相手の個性、価値観、人生設計を無視して、会社側の都合、メリットを押し付けてしまっているのです。

とはえい、会社側としては、ステップをしてもらう必要があります。

なので、人材育成を行う相手と対話して、会社と相手の共通のメリットを共有する必要があります。

そうする事で相手も、人材育成を受ける内発的動機付けが出来ます。

それを行うためには、相手の人生計画、将来のビジョン・目的・ミッションを知る必要があります。

これは、従業員は、給料を貰っている以上、会社の為に働くのは当たり前という強い思い込みが無意識にあるからだと考えます。

ちょっと考えてみてください。

支払っている給料は、労働対価に比例しているのでしょうか?

もし、労働価値の方が、支払っている給料より高かったら。

また、従業員が、貰っている給料が労働価値に見合っていないと感じていたら。

今以上に会社に対して、協力をする義理・理由はありません。

昔、働いていた倉庫では、一人で荷受け、積み込み、倉庫内整理、出荷準備、2トントラックでの配達を行っていました。

これらを行っていても、手取りは、20万円ありませんでした。

正直、労働対価に対して、貰っている給料が合っているとは感じませんでした。

こういった状況の倉庫作業者は多いのではないかと考えます。

多くの企業は、そういった状況を無視してスキルアップ、キャリアプランを提案してしまっているので、相手としては、受け入れる理由が存在しないのです。

仕事に対して、次のステップや成長の機会を見出すことを重要視せず、現状の安定を優先するしている場合、わざわざ現状を変え、今まで精神的な安心感を得ている環境を壊す理由が見当たらないのです。

成功体験の創出

人材育成では、成功体験を通じて自己肯定感を高め、自信をつけさせることが重要です。

しかし、目標を高く設定しすぎると、それが達成できない壁となり、逆に自己肯定感を低下させてしまうこともあります。

そのため、達成可能な小さな目標を設定し、徐々にステップアップしていくことが望ましいです。

この方法は、特に新たなスキルを習得しようとする従業員にとって、大きなモチベーションに繋がるだけでなく、自分の可能性を信じることが出来ます。

小さな成功を積み重ねることで、彼らの中に自信を生み出し、よりワンランク上の仕事内容をやろうという気持ちと興味関心を生み出します。

企業はこのような段階的な成長を支援する環境を提供することが必要ですが、多くの場合、高い目標設定をした上に、目標達成のサポート行いません。

その例として、現場作業者に対しては、研修などを全く行っていない場合が多くあります。

私自身、長年、色々な現場で働いてきましたが、現場作業者に対しての研修というものを受けたことがまったくありません。

唯一、あるとすれば、医薬品を扱っている倉庫作業を請け負っている企業で働いた時には、定期的に請負先の簡単な勉強会に参加をさせてもらったことがあります。

これは、倉庫作業の勉強というよりも、医薬品を扱っているので、それに関連した勉強会でした。

人材育成の主語は作業者か、会社か

人材育成を行う際には、その主語が「作業者のために」か「会社のために」かによって、受け入れられるかが大きく異なります。

作業者を主語にした人材育成は、彼らの人生の目的やミッションに焦点を当てることが普通です。

一方、会社を主語にすると、キャリアアップが目的になり、多くの場合作業者にとっては、やらされ感、ストレス・プレッシャーを感じて、人材育にを受ける事に対して魅力を感じにくいものとなります。

この違いは、従業員と企業との間の期待と実際の行動の間のズレを生む主な要因となります。

従業員は自分の人生計画、将来のビジョンが具体的になっていると、自発的な行動に繋がりますが、会社の利益のためだけに行われると感じると、余計な仕事が増える、責任が増えると敬遠をしがちです。

多くの人材育成というより、スキルアップ・キャリアアップのための育成は、会社都合、会社のメリットを優先している傾向にあると考えます。

昔のような会社は家、一緒に働く人は家族なんて思って、働いている人は限られていると考えます。

なので、人材育成を行う際に会社を主語にしていては、自分の生活・プライベートを重要視している今の時代、相手には受け入れられません。

ただ、物流現場の多くは、自分の生活・プライベートを犠牲にして、働いている人が多いのも事実です。

なので、さらに会社のためにスキルアップ・キャリアアップなんて考える作業者は皆無でしょう。

相手の立場に立った人材育成へ

今日の多様なキャリアパスと働き方の変化を踏まえ、人材育成の考え方も変わる必要があります。

特に物流現場など、非正規雇用者が多い職場では、いろいろな事情や価値観、立場、生活環境の人たちが働いているので、作業者の立場に立った人材育成が求められます。

人材育成は、単にスキルアップを目指すだけではなく、作業者一人一人の人生と向き合い、その人の人生を豊かにするための手段であるべきです。

企業は、従業員が自己実現を図る過程で、彼らをサポートし、共に成長していくパートナーであるべきなのです。

今後は、人手不足となり、優柔な人材、自律的な行動が出来る人材、多能な現場作業者は取り合いにある可能性が考えられます。

なので、既存の作業者のステップアップ・キャリアアップが求められるのも事実です。

だからと言って、会社側の都合、思惑で誰でもそれを受け入れるとは限らないのです。

人手不足なので、今後は、同じような仕事・給料で探そうと思えば、色々とあるでしょう。

とくに倉庫作業は、色々とあるります。

そう考えた場合、会社都合・思惑で、既存の作業者に対して、人材育成を行っても、他へ転職してしまう可能性があります。

そうしない為にも、人材育成の主語を「会社のため」ではなく、「作業者のため」に変える必要がるのです。


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