在庫管理は会社の運転資金管理
物流と生産管理のつながりを理解している人は少ないのではないでしょうか?
ただし、物流において最も問題となるのは在庫管理です。
なぜなら、在庫が増えると倉庫現場は荷物で溢れ、通路と作業スペースを圧迫して、現場の作業効率の低下を招きます。
そのためには、在庫をいかに増やさないか、すなわち在庫コントロールの重要性を実感することになるでしょう。
在庫コントロールとは、製造メーカーの会社においては、どの部署が関係しているかといえば、生産・製造部署です。
別の会社から、商品を購入するのであれば、購買部となるかもしれません。
今回は、製造メーカーという前提で話を進めていきたいと思います。
商品を生産・製造するには、生産計画があり、それを管理する生産管理の部署があります。
なので、在庫管理をするには、生産管理をしっかりと行う必要がありますが、それだけでは不十分です。
なぜなら、倉庫内の荷物の流れとしては、入庫があり、出庫があります。
商品を入庫したら、出庫をしなくては、いつまで経っても倉庫から商品が減らず、どんなに生産管理をしても、倉庫は収容能力を超えてしまいます。
したがって、生産管理を行うことで入庫される商品の数量をコントロールし、現場の混乱や作業効率の低下を軽減することが可能です。
そして、販売とは出庫のことを指します。商品が販売されなければ、在庫は増え続けるだけです。
なので増えた在庫分は、確実に販売しなければ、いくら生産管理をしたとしても、在庫は増える一方です。
このことから、生産と販売をバランスさせる必要があります。
ただ、生産は生産実績を、販売は販売実績を求めるあまり、生産と販売のバランスを崩す可能性を秘めています。
なぜ、お互いが自分たちの実績を重要視するのか?
簡単に言ってしまえば、自分たちの仕事の成果であり、結果だからです。
なので、仕事を行う上で成果・結果が出ない事には、会社から高い評価を得られないからです。
そして、製造メーカーであるからには、モノを作り続けない事には、会社の売り上げに繋がらず、運転資金が枯渇してしまうという宿命を背負っているからです。
ただ、たくさん作ったからといって、必ず売れるわけではなく、場合によっては、生産と販売のバランスが崩れてしまうのです。
そうなってしまうと、倉庫内は、余剰在庫、長期保管在庫が増えていき、保管スペースを圧迫するだけでなく、他社の倉庫に商品を保管している場合は、保管料も月を追うごとに加算でいきます。
このような状況になると、負のスパイラルに陥ってしまいます。
実際、そのような状況に陥った製造メーカーの倉庫で働いた事があるので分かります。
生産の部署としては、欠品をしてはいけないという思いと、従業員の仕事の確保のために生産をし続けます。
そして、販売の部署も、売り上げのノルマがある以上、無理やりにでも顧客から注文を貰ってきます。
注文を貰ってきたからには、その注文に合わせて生産をします。
ここで、問題があります。
無理やり注文をしてもらった関係上、商品は納品しないで、無料で保管をするという条件で注文をしてもらう場合があるのです。
そうなると、注文月の売り上げは上がったとしても、他社倉庫で保管した場合、月々の保管料が加算され、利益がどんどん減っていきます。
そこで重要な立ち位置になるのが物流=倉庫になります。
倉庫作業者は、実際の商品の動きを見ているので在庫の余剰、過剰、長期保管といったものを分かっています。
そういった状況を生産と販売部門に伝えることで、生産と販売のバランスを良くするための在庫コントロールが可能になります。
在庫とは会社の資金を投じて商品化したものであり、会社にとっては借金でありつつも資産でもあります。
なので、商品を在庫として、倉庫内にずっと保管をしているという事は、会社にとっては借金をずっと背負っているのと同じなのです。
商品を売って初めてお金に換えられ、運転資金を得て経営が成り立ちます。
もちろん、運転資金が足りなければ、銀行から融資をしてもらうという手段もありますが、それはただ負債を増やすことになるとも言えます。
在庫が減らない以上、会社としての借金は減らないのです。
海外では、物流の地位が日本に比べて高いという事は知られている事です。
なぜ、地位が高いのか?
答えは、簡単ですよね。
在庫=会社の借金・有形資産を管理している部署だからです。
言い方を変えれば、物流は会社の運転資金を管理・コントロールしているのです。
ところが日本は、どうでしょうか?
長年、物流は、保管・輸送といった単純作業という思い込みにより、物流会社にアウトソーシングされ、コスト削減の絶好のターゲット部署となってきました。
その結果、自然と企業内においては低い地位に追い込まれてきました。
その結果、優秀な人材が集まらず、人材育成も無用と考えられ、現場作業者の多くはパート・派遣社員・ギガワーカーが占めています。
もちろん、パート・派遣社員・ギガワーカーの人たちが、レベルが低いとそんなことを言うつもりはありません。
むしろ、正規雇用の作業者より、真面目に、黙々と働いています。
ただ、非正規雇用者である以上、会社側といては、人材育成にそれほど力を入れていないのが現状です。
その現状が物流現場のレベルを一定レベルより上げない、上げられない現状を生み出しているのです。
そして、単純作業という謳い文句で作業者を募集しているため、やりがいがない、何も学べない、自己成長が出来ないという印象付けてしまっている事に繋がってしまっています。
その結果、優秀な人材や若い人からは就職先として敬遠され、物流現場の一定のレベルを壁を超える事が出来ずに作業効率が上がらないという現状に甘んじてしまっているのです。
本来であれば、物流は、生産と販売の両方をコントロールでき、最適化が出来る立場でもあり、会社の資金の管理・コントロール立場というやりがいのある重要な仕事なのです。
にもかかわらず、日本は物流の地位を単純作業という印象を付けて、会社の全体最適化のきっかけを手放しているのです。