物流現場作業は、単純作業なのか?

昔から物流現場は、単純作業と言われてきました。

そして、昔の建築現場は、
「きつい」、「汚い」、「危険」と言われてきました。

ところが、平成27年に当時の国交省大臣と
日本経団連が建設業の担い手確保のために
「給料・休日・希望」といった新3Kを提唱し、
建設技能者の処遇改善に向けた提案をしたそうです。

では、物流現場は、どうなんでしょうか?

中小・零細企業の中長距離トラックドライバーは、
「給料は安い」、「休日は少ない」、「希望はない」の
3Kではないかと思います。

そして、物流現場の作業者は、
「きつい」、「汚い」、「気楽」という
3Kで表現できるのではないかと思いっます。

この3Kの最後の「気楽」という部分が、
単純作業と思われている原因だと考えられます。

確かに、毎日、同じ人たちと、
決められた同じ作業を行うだけと考えれば、
数字に追われることもなく、複雑な人間関係に悩みこともなく、
気楽なのかもしれません。

ただ、それが許されるのは、
パートやアルバイトだけのはずです。

正社員の作業者が、
そんなお気楽な考えで作業を行なっていては、
いつまで経っても現場は改善・改革が出来ず、
生産性も上がらなければ、利益も上がりません。

何より、そんな職場に優秀な人材が入社をするはずもありません。
まかり間違って入社をしたとしても、すぐに辞めていく事でしょう。

では、本当にお気楽な職場なのでしょうか?
私は、20年以上、さまざまな倉庫現場で働き、
いつも時間に追われて、
状況に合わせて柔軟に対応する働き方を迫られてきました。

そして、私が辿り着いた倉庫現場作業者に必要なスキルは7つあります。

1:「俯瞰力」
2:「想像力」
3:「対話力」
4:「気働き(ホスピタリティ)」
5:「対応力」
6:「判断力」
7:「行動力」

各項目の簡単な説明としては下記の通りです。

俯瞰力
仕事の優先順位や仕事の段取りを考える為に
全体の状況や仕事の流れを把握するために必要となります。

俯瞰力を高める事で状況や物事を1つの視点で見るのではなく、
様々な立場の視点を取り入れる事によって
全体像が明確に見えてきます。

倉庫の整理整頓に生かす為には、
一つの作業だけを行なっていては磨くことは出来ません。

先ほどお話ししたように整理整頓は、
入荷から出荷作業まですべてに影響を与え、
線で繋がっているからです。
 
入荷・格納・出荷・積み込み作業までを経験する必要があります。

想像力
言い換えるとイメージ力のことです。

頭の中で、自分の考えている事を実行すると、
どのようなメリットやデメリットがあるかを想像する為に必要となります。

様々な状況を経験することによって、想像力は高まっていき、
状況を具体的にイメージすることが出来るようになっていきます。

倉庫の整理整頓の場合、
Aという整理整頓の仕方をすると格納や出荷作業に
どのような影響を与えるか想像する事が出来ます。

いくつかの整理整頓のパターンを想像し、
状況に合った整理整頓パターンを想像していくのです。

対話力
会話と混同されがちですが、
対話は、お互いの考えや行動に対しての理由や動機を話す事です。

対話をすることで、相手の考えや価値観を理解することが出来、
相手のことに対する理解度が高まり、信頼度を高めることが出来ます。

また、お互いの意見を取り入れる事で、
1+1を2にするのではなく2以上にすることができます。

1人の価値観や考え方では、
改善策やアイデアを導き出すには限界があります。

その限界を上げるためにも、対話力は必要不可欠です。

これにより、
作業者一人ひとりの仕事に対する姿勢を知る事が出来る事で、
作業者の仕事のやり方に沿った整理整頓を行う事が出来るようになります。

気働き(ホスピタリティ)
ホスピタリティやおもてなしで求められる
気遣い・気配りといった事を意味します。

仕事の段取りを考えるにしても、
状況に応じて、対応するにしても、
周りの人たちの事を考え、行動する必要があります。

自己中心的な考えで、整理整頓や仕事の段取りを行っても、
必ずしも、相手が仕事がやり易いとは限りません。

その為にも、気働きが必要不可欠なのです。

対応力
目の前で起こっている状況に対して、柔軟に対応する為に必要になります。

そのためには、
経験に基づく知恵と言うものが必要となりますので、
身に付けるには時間がかかります。

繁忙期は、荷量が通常より一時的に増えますので、
この対応力を高める事で、繁忙期の整理整頓に柔軟に対応する事が出来ます。

判断力
目の前の状況に対して、現時点で得ている情報をもとに、
最良最善の策は何かを判断する為に必要になります。

そのためには、様々な状況を経験する必要があります。

判断が遅かったり、迷って決めきれなかったりした場合、
現場の人を不安にさせたり、時間を無駄にしてしまいます。

行動力
行動して状況を変えることを意味します。

頭の中でいくら考え、イメージして、
判断しても、実際に行ってみたら、うまくいかない場合があります。

そのためにも、判断したら、すぐに行動し、修正する箇所は修正します。

行動する事でメリット・デメリットが明確化されますので、
その後の行動の参考にもなります。

なぜ、これらのスキルが必要かと感じたのは、
一人でさまざまな作業を並行して行ったからです。

普通、倉庫作業であるピッキン・格納・受け入れ・積み込みは、
一人ひとり担当者を決めて行うものです。

ただ、作業者少なけば、各作業を兼任して行う必要があります。

私の場合は、一人で全部の作業を行っていました。
なので、7つスキルが必要不可欠だったのです。

これでも、倉庫現場作業者は、お気軽な仕事と言えるでしょうか

もちろん、
大手の製造メーカーの倉庫の構内作業を行なっている作業者は別です。

製造メーカーは、生産性の追求を行うことが、
当たり前に行われている為、常に試行錯誤をしているので、
さまざまなスキルが求められます。

とはいえ、
構内作業を請け負っている企業によっては、
安定に胡座をかいて同じ作業を淡々と行っている場合もありますので
一概には言えません。

そこで、改めて、物流現場の作業は、単純作業なのか?

という問いの答えとしては、
改善・改革を行っている物流現場は、単純作業ではなく、
常に試行錯誤の連続であり、
さまざまなスキルを身に付け、磨き、高められる現場なのです。

先程、お伝えした7つスキルは、
どんな業界、業種でも求められるもののはずです。

それでは、なぜ、
物流現場作業は、単純作業と思われてしまったのでしょうか?

それは、物流現場の責任者・リーダーが、
どう考えて、どう行動したなのです。

責任者やリーダーが、改善・改革に対して、
積極性に欠けていたら、惰性で仕事を行い、
単純作業に成り果ててしまいます。

逆に改善・改革に対して積極的な現場は、
常にスキルを身に付け、磨き、高められる場所になります。

これが何を意味するのか?
それは、仕事に対してやりがいを生み、
目標を作り、達成感を感じ、自己肯定感を高め、
自発的行動を生み、チャレンジ精神を刺激し、
組織の活性化に繋がります。

もちろん、会社側のさまざまサポートが必要不可欠です。
会社側が、何もサポートせず、すべて従業員任せにしては、
従業員は、プレッシャー・不満、ストレスが溜まってしまいます。

そして、耐えかねて、
指示待ち従業員に成り果てるか、会社を辞めていきます。

ただ、現場作業者に対する人材育成に投資を渋る
中小零細の物流企業は思った以上に多いと感じます。

なので、結局、向上心・学習意欲が高い優秀な人材が入って来ず、
物流現場は単純作業と長年思われてきたのではないかと考えられます。

言い換えると、
物流企業が、自ら優柔な人材が入社する環境を
作らなかったり、壊しているのです。

その事に気づけないのは、何も考えていない、
同じ仕事を淡々と繰り返す作業者だけで、
仕事が回っていく現状があるからだと考えられます。

もし、早急に改善・改革を行わないと
会社が倒産する、破産するとなったら、
どうでしょうか?

同じ作業を淡々と繰り返す作業者では、
何も出来ず、倒産・破産を待つだけです。
その時になって慌てふためいても遅いのです。

それでなくても、作業者の高齢化、人手不足が
深刻な問題になってきている現実問題が差し迫っています。

その問題を解決する為にも、
向上心・学習意欲が高い優秀な人材の確保が急務なのです。

その為にも、現場の責任者・リーダーの意識変化・行動変容が急務です。
もちろん、その変化に戸惑いや抵抗をする作業者もいると思います。

そう言った変化に対応できな人は、
会社からお引き取りを願うか、
可能で有れば部署変更をする事も必要ではないかと思います。

そうまでして変える必要があるのかと思われるかもしれませんが、
それを招いたのは、
会社のトップである経営者であり、現場の責任者・リーダーなのです。

物流現場の作業が単純作業と思われてしまった原因は、
ひとえに経営者や現場の責任者・リーダーの
考え方や行動が反映されているのです。

物流現場作業を単純作業にするのも、
さまざまスキルを身に付け、
磨き、高める修練の場所に出来るのも、
経営者・現場の責任者・リーダーの考え、行動次第なのです。

優秀な人材が入ってこないと嘆く前に、
自分たちの考え、行動を振り返り、見直し、
変える処は変える努力をしなくては、何も変わりはしません。

作業者だけに変化を求める前に、
経営者・現場の責任者・リーダーが変わらなくては、
誰もついてきません。

それが出来なければ、
今の地位から退いた方が、周りの人達や会社の為とも言えます。


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