これから本格化する物流危機の本質とは?
2024年は「物流危機」の年として多くの注目を集めました。
メディアや行政の報道では、トラックドライバー不足や労働環境問題、トラックの荷待ち問題といった「運ぶ」部分に焦点が当てられることが大半でした。
しかし、物流の現場を知る者として感じるのは、これでは物流危機の本質を捉えきれていないということです。
実際の物流は、「運ぶ」だけで成り立つわけではありません。
その前後には、倉庫での作業や荷主との調整など、多くのプロセスが絡んでいます。
荷物を保管し、在庫を管理し、トラックに積むまでの準備を整える倉庫作業は、物流全体の重要な柱です。
しかし、倉庫の内情はセキュリティや契約上の都合で外部から見えにくい「ブラックボックス」になりがちです。
その結果、課題が見過ごされてしまう現状があります。
倉庫作業の現場から見える課題
倉庫作業には多様な荷物を扱うため、さまざまな責任が伴います。
医薬品では厳格な温度管理が求められ、冷蔵設備のメンテナンスや定期的な温度確認が必須です。
一方、生鮮食品では迅速な出荷が求められ、期限内に出荷するための効率的なピッキング手法が重要です。
機械部品では、形状や重量が多岐にわたるため、専用の梱包資材や荷扱い手順が必要とされます。
それぞれが異なるルールや段取りを必要とし、現場ではこれらを柔軟に対応する体制が求められます。
一方で、燃料費や人件費の高騰、労働力不足が進む中で、人手に頼らざるを得ない作業を効率化する必要性が高まっています。
このような背景から、倉庫作業の現場では多くの課題が山積しているのが現状です。
ところが、メディアや行政の視点では「運ぶ部分」が取り上げられる一方で、倉庫の役割や課題は軽視されがちです。
その結果、倉庫側が悪者扱いされることさえあり、その重要性が正しく理解されていないことに悔しさを感じます。
物流危機の本質とは何か?
物価、運賃、燃料費、人件費が上昇し続けるこれからの時代、物流危機はさらに深刻化するでしょう。
これらのコスト増をそのまま商品価格に転嫁してしまえば、消費者の購買意欲が低下し、企業の利益は減少。
最終的に経営難に陥る可能性があります。
だからと言って、物流が滞れば、商売そのものが成り立たなくなるのです。
物流危機を解決するには、運送だけでなく、倉庫作業や荷主との調整といった物流全体を一体的に改善する必要があります。
そして、荷主との情報共有をデジタル化することで、物流全体の効率化につながり、危機を乗り越える鍵となるでしょう。
これからの物流業界への期待
2024年は物流危機の入り口に過ぎません。
これから本格的に危機が到来する時代に、私たちは突入していくのです。
その中で、物流の全プロセスを見直し、多角的に問題に向き合うことが求められます。
たとえば、AIを活用した需要予測システムの普及や、政府による物流効率化に向けた政策の強化が進むことで、トラックの稼働率向上や倉庫作業の自動化が実現する未来が考えられます。
また、再生可能エネルギーを活用した低コスト運送システムや、地域ごとの物流プラットフォームの整備が進むことで、サプライチェーン全体の持続可能性が向上するでしょう。
消費者側にも物流の重要性を啓発する取り組みが必要です。
たとえば、送料無料の背後に隠れた物流コストを理解し、適切な料金を支払う文化が形成されれば、持続可能な物流が実現します。
現場で働く全ての人が安心して働ける環境を整え、最新技術や政策の恩恵を受けながら、物流の重要性が社会全体で共有される未来を目指したいものです。
「物流なくして商売なし。だからこそ、今こそ物流の本質的な課題と向き合う時なのです。」