物流輸送問題は始まりに過ぎず、倉庫問題へ
2024年物流輸送問題で、トラックの積載率が課題になっています。
その解決策で、業界を越えた共同輸送を行いだしています。
これ以外にもっと簡単な対策として、倉庫内の在庫を増やすというものがあります。
運べる回数が限られるのであれば、倉庫内の在庫を増やして、運ぶ回数を減らすのです。
例えば、今まで2パレットのストック在庫があったとします。
それをストックを3パレット増やして、ストック在庫を5パレットにするのです。
ただ、商品の種類が30種類あった場合、単純計算で90パレット増えることになります。
これにより、保管料の増加、保管スペースの確保、在庫管理に対するプレッシャー・ストレス、倉庫内の整理整頓の負担の増加など現場の負担は計り知れません。
そして、ほとんどの倉庫は、それほど余裕がない状況で物流業務を行っています。
繁忙期は、パレットラックに格納しきれず、通路に仮置きをして、置き場所を確保している状況でもあります。
ということは、荷主企業としては、新しい倉庫を建てるか、保管スペースの多い物流業務の請負業者に変える必要がでてきます。
もちろん、保管スペースだけが問題になるわけではありません。
共同輸送をするということは、複数の倉庫を回って荷下ろしをすることを意味します。
そう考えた場合、どこかの倉庫でトラブルや荷待ちが起こったら、確実に運行状況に影響を与えます。
例えば、午前7時に荷下ろしを開始して、午前8時に次の下ろし場所へ向かい、9時30分に次の荷下ろし場で作業を開始するという運行計画だったとします。
ところが、最初に行った倉庫で、荷下ろしに手間取った上に、検品で破損が発見されて、その対応で20分遅れたとします。
たかが20分、されどう20分です。
20分遅れ、渋滞にはまり、次の倉庫に40分遅れで到着したとします。
その時に運が悪ければ、荷待ちが発生する可能性もあります。
これにより、なにが起こるかと言えば、倉庫内の段取りが大幅に狂ってしまいます。
トラックの到着時間に合わせて、人員を準備、配置しているのに、その時間にトラックが来ない。
これにより、人員は手持ちぶたさになり、時間が無駄になってしまいます。
そして、遅れて到着したトラックに対応できる人員がいない、または少なくなり、作業の効率が落ちるだけでなく、倉庫内の他の作業にも影響を与えます。
本来ならこのようなリスク管理をするべきですが、現状、現場が柔軟に対応するだろうと軽く考えている傾向があるみたいです。
こういった状況に一石を投じるのが物流統括管理者ではないかと考えます。
問題は、物流業務を委託業者に丸投げをしている場合、現状をいかに把握して、的確な対応が出来るか疑問が残ります。
物流倉庫現場の多くは、正規雇用者ではなく、非正規労働者であるパート・派遣社員が多く働いています。
そういった人たちの事を理解し、現状に合った対策を考える事が出来るのか難しい課題に直面をするのではないかと考えます。
ただ、荷主企業からしてみれば、現場の事は良く分からないからと、机上の空論で大雑把な対策を考え、細かい事は現場に任せると対策に関しても丸投げをする可能性もあるのではないかと考えます。
問題は、それでは現場の作業効率は上がらなのです。
輸送の効率化はできても、倉庫現場の作業効率は変わらないか、下がる可能性があると考えます。
では、どうするか?
一つの手段として自社物流を行い、現場の状況を知り、現場コントロールの主導権を握るのです。
もちろん、すべての物流業務を自社に変える必要は必ずしもありません。
少なくとも在庫管理の業務は、自社で行う事で、適正在庫の状況を数値ではなく、現物を見ながら考えることができます。
倉庫現場において、一番のネックは在庫数の多さです。
入庫数が多いと、荷待ちが起きる、荷物の移動時間が長くなる、保管スペースが足りない、時間に追われる、事故率が高くなる、作業者に負担・プレッシャーがかかるなど、良い事はまったくありません。
そのような状況は、現場の状況を実際に見ないと分からないことです。
たまに、荷主企業の人が倉庫の現状を見に来ますが、視察に来る時間帯と時期が問題なのです。
ほとんどの場合、忙しくない時期・時間帯に視察に来ます。
視察に来るのであれば、荷物が溢れている繁忙期や荷物の入荷時間や出荷時間に来なくては、視察の意味がないのです。
製造業界では、「現場」「現物」「現実」の3つの現を重視する三現主義を重要視されますが、物流業界において、このような言葉を聞いたことがありません。
なぜ、このような三現主義が言われないのか?
それは、製造業界は、効率が良い生産計画を考え、生産性を高めるには、現場・現物・現実を知る必要があるからです。
そして、現場の主導権は自分たちで持っています。
なので、状況を知る事で、いくらでも改善・改革をすることが出来ます。
ところが、物流業界は、主導権は荷主企業が持っています。
荷主が、これだけ商品を保管してくれと言われれば、ノーとは言いずらい主従関係にあります。
なので、現場主義を行うにも限界があり、改善・改革にも限界があるのです。
そのことを知らず、気にせず、物流現場に丸投げをして、コスト削減と作業効率アップを行ってきたのが、荷主企業とも言えます。
ただ、それも限界にきているのです。
なぜなら、倉庫現場の効率を上げるための最大の要素を持っているのは荷主企業だからです。
そのことに気づいた企業は、自社物流を取り入れつつ、今後は、全体最適化を進めるのではないかと考えます。
今は、輸送問題がフォーカスされていますが、今後は倉庫問題に発展すると考えます。
そして、倉庫現場の人手不足も相まって、物流の流れが倉庫で遮断されて、本格的に物流危機の到来となる可能性を秘めていると考えます。
なので、トラック輸送の効率化をして、それで終わりではなく、物流危機の始まり、入り口と捉えるべきだと考えます。