現場作業者を多能工化するために必要なこと
倉庫現場作業者の多能工化をするには、時間と根気がとても必要。
倉庫現場には、荷受け、格納、在庫管理、ピッキング、梱包、積み込みと言った様々な業務があります。
これらをすべて経験して、実務能力を高める必要があります。
では、どれぐらいの期間必要なのか? それは、倉庫の規模や扱っているアイテム数や商品にもよりますが、守破離の考え方に基づいて、入庫・在庫管理・出庫の業務を最低でもそれぞれ3年は必要でしょう。
1年目で、作業の全体の流れ、季節・繁忙期・閑散期の状況を知り、作業の基本を身に付けます。
2年目で、作業の基本を守りながら、状況に合わせて臨機応変に対応する能力を身に付けていきます。
3年目で、作業の基本を下地にして、自分らしい仕事の型を確立します。 言葉で言うのは、簡単ですが、惰性で作業を行っていては、守の領域から出て、破の領域へステップアップする事では出来ません。
そんな事かと言うかもしれませんが、毎日、ルーティン的な作業を行なっていると、慣れから何も考えずに惰性で作業を行なってしまい、基本を守るだけで終わってしまうんです。
では、どうすればいいか?
作業者自身の向上心を高める必要があります。
向上心を高める為には、どうするか?
多くの現場では、その答えを出すことが出来ない、答えを考えるきっかけすら無い事で、惰性ルーティン作業を行う作業者になってしまっているのです。
向上心を高めるの答えに正解はありません。
何故なら、作業者1人ひとり人生観、価値観、仕事・生活スタイル、生活水準が違うからです。
とは言え、それらを超越して、向上心を高める答えは、1つだけあります。
その答えとは、一度でも地獄を味合わせる事です。
このままでは、仕事が終わらない、仕事が滞る、周りに迷惑をかける、どうする事も出来ないと言った状況の地獄。
そんな状況に追い込まれると、開き直るか、どうすれば良いかを真剣に考えます。 どちらを選ぶかは、一人ひとり違います。
多くの場合、仕事である以上、仕事を終わらせる必要があるので、開き直るのと真剣に考えるの中間を選ぶでしょう。
とくに作業者が多い現場では、責任の所在が不明確になるので、真面目に仕事をやるけど、仕事を効率よく行う事を真剣に考える事には至りません。
簡単にいって言ってしまえば、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という心境です。
私の場合、作業者が少なく、自分で考え、行動しなくては、誰も助けてくれない、代わりにやってくれる人がいなかったので、逃げ道がない、責任転嫁が出来ない環境でした。
なので、目の前の状況を自分事として捉える事により、強制的に向上心を得られました。
とは言え、私の経験は、今の時代には合いません。
何故なら、残業時間規制やパート・派遣社員の活用など、現場作業者を比較的簡単に増やしたり、減らしたりす事が出来るので、私の場合とは、時代が変わってきているからです。
なので、時代に合った方法が必要です。
その一つが、コーチングです。
コーチングは、日本に根付いているようで根付いていないと考えます。
とくに物流現場においては、現場作業者に対する人材育成自体が根付いていない事から、コーチングの導入には、大きな壁が存在します。
ただ、守破離の守から破に移行する為には、コーチングは有効です。
とは言え、聞き慣れないコーチングに対する拒否反応は大きでしょう。 では、どうするか?
作業者に対する向上心に期待、高めるのではなく、最初の1年目に作業をする中で気づきをメモさせて、月1回、メモの内容をまとめていく事です。
1年を通して、まとめたメモを参考にして、2年目の作業を見直しながら、基本を守りながら、作業に工夫を加えて、幅を広げていくのです。
そして、1年目と同様に気づきメモを書いていくのです。
なぜ、1年を通して気づきメモを書いていく必要があるのかと言えば、物流には、繁忙期・閑散期があるように季節ごとに荷量の動きが違います。
そして、3年目から、2年目の気づきメモに基づいて、さらに作業に工夫を加えて、自分の仕事の型を確立させていきます。
気づきメモ関して言えば、何も手書きにこだわる必要はありません。
最近は、スマートフォンなどを活用すれば、簡単に文字起こしが出来まし、メモの内容を他のメンバーと共有も出来ます。
時代の流れと共に、活用するツールも変えていく必要があります。
ただ、3年を過ぎたからと言って、そこで終わりではありません。 物流は、常に変化していきます。
なので、常に状況に合わせて、作業の流れを工夫して変えていく必要があります。
多くの場合、作業者の多能工化は、それぞれの業務をローテーションで行なったり、1年間づつ行えば出来るとは考えます。
ただ、出来ると言うだけで、それは基本的な作業が出来ると言うだけです。
作業効率を上げた作業をするには、それなりに時間と根気が必要です。
時間と根気が求められる事なので、多くの現場では、簡易的な多能工化で終わらせてしまっています。
もちろん、それはそれで良いと考えます。
ただ、本当の作業者の多能工化を行うのであれば、最低3年の時間と根気が必要なのです。