倉庫作業を単純作業と定義付けしたのは、誰か?

倉庫作業を単純作業と印象付けたのは、誰なのでしょうか?

ハッキリ言ってしまえば、それは、物流企業、倉庫企業だと考えます。

その代表例と言っていいのが、求人雑誌、求人サイトに載っている倉庫作業の説明と言えば、誰にでも出来る、簡単に出来る、すぐ覚えられる、といった謳い文句です。

実際、行ってもらう作業は、検品作業、格納作業、ピッキング作業、梱包作業、仕分け作業、と単純作業と言ってもいいルーティーン作業です。

なので、働く人自身も、求人の情報通りなので、ほとんど不満はないでしょう。

こうして、倉庫作業は単純作業と世間に広まっていったのです。

このことから、倉庫作業は単純作業という定義付けしたのは、物流企業であり、倉庫企業自身なのです。

さらに、荷物の波動が激しい倉庫現場においては、スポットワーカーを積極的に活用することで、さらに単純作業という印象を強めているのが、今の流れではないかと考えるのです。

このように、倉庫作業は、単純作業という定義付けをして、世間に広めてしまったことにより、最大の弊害は、優秀な若い人材にまったく見向きもされなくなってしまったことではないかと考えます。

都合がよく、安い労働力を手に入れる為に自ら蒔いた種とはいえ、これは、思ってもいない弊害ではないかと思うのです。

というよりも、企業自体は、そのことに気づいていない可能性が高いともいえるでしょう。

今の優柔な若い人材は、しっかりとした将来のビジョンを持ち、自分なりのキャリアデザインを描いて、目的意識を持って働いています。

なので、情報を収集することで、物流・倉庫作業は単純作業という情報が多くあれば、あえて、その業界で働こうと考える人は少ないですしょう。

そんな時間の無駄をするのであれば、製造メーカーの物流部門に入り、上流からの物流の流れを俯瞰したほうが、学べることは多くあります。

何より、まともな人材育成・研修をしない物流業界の現場で働く事のメリットなど無いに等しいと言ってもいいでしょう。

もし、物流現場を体験したいのであれば、お試しでスポットワーカーとして、少し働けばいいだけのこと。

このように優秀な人材が集まらないことにより、根本的な作業工程の改善・改革が出来ず、結果的に昭和時代の人海戦術で作業を回すために、安直な謳い文句で安い労働力を集めるという変わり映えのしないサイクルを繰り返している。

そのサイクルを壊すキッカケともいえるのが、自動化、DXとなるのですが。

変化を嫌い、現状維持を固持したい既存の古株の作業者や職員の抵抗により、単純作業という定義を変えることが出来ないのが現状だと思うのです。

では、本当に単純作業なのでしょうか?

一つ一つの作業を単体の工程として見ると、単純作業ではありますが、これは、どんな業界・業種の仕事にも同じことが言えるのではないかと考えます。

検品作業、格納作業、ピッキング作業、梱包作業、仕分け作業の作業の関係性を考えると工場のラインのように見えてくると思うのです。

入荷した荷物を検品し、指定の場所・棚へ格納、出荷指示に通りにピッキング、ピッキングした荷物を指示通りに梱包、梱包された荷物を発送先ごとに仕分け。

このように作業は、それぞれ関連していて、どこかの作業で不具合が出れば、作業は止まってしまいます。

なので、重要なのは、前後の作業との繋がりをいかに効率よく行うかも重要なポイントとなってきます。

ただ、工場のラインと違う事と言えば、生産計画という決まったスケジュールがなく、不透明な部分が多くあるという事です。

多くの倉庫の場合、出荷量は当日の朝に決まる、昼に決まるという事があったり、繫忙期・閑散期といった荷量の変動が多いという事です。

そのため、その日の荷量、作業内容、作業者の人数に合わせて、現場作業をマネジメントする必要があります。

各作業工程だけを行っている作業者にとっては、目の前の作業だけを行うだけなので単純作業と言えますが、現場作業をマネジメントをする人にとっては、倉庫作業はまったく単純作業ではないのです。

このことから、倉庫作業は単純作業ではなく、常に状況に合わせた判断と行動を求められるので、様々なスキル・知識が必要とされます。

ところが、そういったスキル・知識を得るための研修は、全く行われれていない場合が多いので、少しでも向上心・学習意欲がある人材をする必要があるのです。

なので、現場作業をマネジメントするために優秀な若い人を採用したいはずなのです。

ところが、自ら蒔いた「倉庫作業は単純作業」という種が成長して、それにビジネスチャンスを見出した企業が、さらに大きく育ててしまって、優柔な人材から見向きもされないのが現状と考えます。

ところが、今後は、労働人口が減少していく事で、その単純作業すら行う人が減っていくのです。

そのために、自動化やロボット導入が進んでいますが、まだまだ、人間が行わないと出来ない作業が多くあったり、自動化やロボット導入では利益が出ないことで、人に頼るのが現状です。

人に頼るにあたり、「検品作業、格納作業、ピッキング作業、梱包作業、仕分け作業」の3つ、4つは出来るように、作業者の多能工化が必須となってきますが、そうなってくると単純作業という定義から外れてしまいます。

なので、パートやスポットワーカーといった非正規作業者に頼るにも限界があります。

正直、ここまで世間に認知された「倉庫作業は単純作業」という定義を変える事は難しいと考えます。

では、どうやって変えるのか?

その第一歩として、既存の古参の作業者の意見は無視して、若い、将来の現場の背負っていく作業者を中心にして、現場改革チームを作るべきなのです。

また、倉庫現場作業者は、どうしても閉鎖的な環境で仕事を行うため、外部との情報と触れることが少なく、自分たちの行っている作業が当たり前、標準と思い込んでしまう環境でもあります。

なので、チームのメンバーには、物流展などにも積極的に行ってもらい、さまざまな人と交流し、最新の物流の流れや情報に触れてもらう必要があります。

そして、チームからの改革意見を否定的に捉えるのではなく、あくまでもポジティブに捉えて、実現するとどうなるのか、具体的に考える必要があります。

10年後、20年後、今の会社の現場を支えてるのは、既存の古参の作業者ではないのです。

二歩、三歩先を見据えて、現場を構築していかなくては、結果的に若い人はいなくなり、倉庫現場は、老人ホーム化するでしょう。


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