安全を第一に

ホンダは創業期に、小型自動車工業会(現在:日本自動車工業会)の合意を得て、二輪企業だけで資金を出し合い(ホンダがかなりの負担をして)浅間高原にオートバイのテストコースを作っている。

 

それに伴い、そのコースでレースも開催されたが、オートバイの性能の進化に耐えられるほど立派なコース設計ではなく、レースを見に来ていた観客は走路に上って見て、後ろから押されていたり、そのせいで、ただでさえ狭いコースがさらに狭くなり、霧の濃い秋の浅間高原のと言う事で、怪我をしたドライバーもいたとか。

 

大会委員長になっていた藤澤氏は、そのような状況を知るると、ドライバーだけでなく、観客にまで危害が及ぶので、レースを開催すべきでないと判断し、翌年のレース開催中止を申し入れている。

 

オートバイ雑誌の人達や一部のメーカー人たちから、せっかく作ったコースを使わないのはもったいないから、われわれに課してレースとやらせてくれと、再三の申し入れに対し、藤澤氏は「浅間でやる限りホンダからはレースに選手は出さない。生死に関する問題について、私は無責任ではありえないから、委員等は辞めさせてもらう」と言っている。

結局、小型自動車工業会としては、コースは貸さないことになった。

この件に関して、藤澤氏は“ダメだ”の一点張りで通したという。

 

この浅間レースからの撤退は、”危険を無視するオートバイ・メーカー”と言う世間の印象を防ぐためと藤澤氏は言っている。

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