得るもの
「経営に終わりはない」著作:藤澤武夫
を読んで。
藤澤氏が、宗一郎氏とコンビを組む際に言った言葉で、
「私は商売人だから、これから一緒にやるけれども、別れるときに損はしないよ。
ただし、その損と言うのは、お金と言うことではないよ。
何が得られるか判らないけども、何か得られるものを持ってお別れするよ。
だから、得るものを与えてほしいとも思うし、たま得るものを自分でもつくりたいと思う。」
がある。
これは、ある意味Win・Winの関係だと思う。
そして、引退する際の二人が交わした言葉で、
宗一郎氏から、
「まあまあだったな。」
「そう、まあまあさ。」
「ここいらでいいということにするか。」
「そうしましょ。」
「幸せだったな。」
「本当に幸福でした。」
「おれも礼を言うよ、良い人生だったな。」
と言うのがある。
初に交わしたとおり、お互いかけがいのないモノを得て別れたのが判る。
この会話の後、藤澤氏は、浜松にある宗一郎氏の家に訪れた。
戦後で生活が大変にも関わらず、奥さんの手打ちうどんを大きなざるにいっぱい盛ってくれたそうだ。
これは、手一杯のモノをご馳走しようと言う奥さんの気持ちが伝わってきたと藤澤氏は感じ、もし、小さいざるに盛られたら、手を組まなかったかもしれないと思ったぐらいだそうだ。
そして、今度は、宗一郎氏が藤澤氏の家に訪れた際に、宗一郎氏が藤澤氏奥さんに、
「奥さん、成功するとばかりはかぎらないだからね。」
と言った。
事業の成功は、家族には縁がない事ではあるが、事業が失敗すると言う事は、家族も苦しむ事を意味している。
その事への忠告でもあり、優しさでもあった。
藤澤氏も感じているように、宗一郎氏は、職人気質で、ハングリーで育った中にも、相手の事だけでなく、家族までも心配する優しさを持ち合わせていた。
そう言う経緯もあって、藤澤氏は、人と人を結びつける条件は、まずは、信頼であり、いたわり合いであり、その基本が家族にあると言う事で、人を判断する時は、その人の家庭を見たという。
今の時代、核家族化が多くなり、その結果、自然と人と人結びつける力が弱くなり、相手を信頼する気持ちや相手をいたわると言う気持ちが薄れてきているのではないかと思う。
よく兄弟は、他人の始まりと言うが、自分の母親は、自分達の兄弟と年一回は、どこかへ旅行へ行っている。
母親の実家は、植木関係で自営をやっていた関係で、つながりが強いだけかもしれないが。
藤澤氏は、創業者と普通の経営者の違いについて、
「創業者は、いわば一種のバクチ打ちですね。
どんな浮き沈みがあるか判らない。
だから、小心な女房では、だめだろうと思う。
結局、亭主の足を引っ張る事になりかねませんからね。
一般のサラリーマンは、身につけた学歴を金に代えると言う格好で会社に入る。
そこで、着実に勤めていれば、出世をして、いずれは経営者になる事もあります。
その生活で基本になるのは、安定と言う事です。
創業者と経営者ではそういう違いがあるから、創業者の奥さんはかなり度胸がよくなけりゃあならないと思いますね。」
と言っている。
確かに、創業者には、絶対に成功すると言う保証は誰もしてくれない。
サラリーマンから、経営者になるのであれば、少なくても事業としては成功している事になり、生活の安定は保証されている。
仕事に集中する為には、家庭を任せる事の出来る奥さんが必要不可欠と言う事が判る。
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