倉庫作業者の労働時間規制が話題にならない理由とその影響

2024年物流問題において、2020年にすでに施行されている倉庫作業者の労働時間規制があるにも関わらず、トラックドライバーの労働時間規制より話題にならないのは、なぜでしょうか?

答えは、簡単です。
トラックドライバーよりも労働時間(残業時間)を誤魔化すことが簡単に出来るからです。

トラックの場合、「基本的に会社の車庫に無い=労働している」ことになるので、労働時間の把握はしやすいです。

ところが、倉庫作業者の場合、タイムカードだけで管理をしています。

その結果、タイムカードに記載されていない時間帯に働いたとしても、それは労働時間にカウントされません。
いわゆるサービス残業です。

このサービス残業が発覚するとすれば、倉庫内で作業をしている時に、労災になるような事故が起こらない限り、社内で処理をされてしまいます。

また、休憩時間も労働基準法第34条で、労働時間が 6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分 8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない、と定められています。

ただ、6時間を越えなければ、休憩時間は必要ないとなっていますが、ちょっと考えてみてください。
9時から勤務した場合、15時まで休憩無しで働けという事なります。
これが何を意味するかと言えば、昼ご飯を食べないとなります。
そんなの無理という人がいるかもしれませんが、私はそれで働いていました。

倉庫現場は、時間に追われている場合が多々あります。
作業を後回しにすれば、それだけ、終わり時間が遅くなります。

それは、なにを意味するのか?
答えは簡単です。
残業時間が増えるだけです。

なので、仕事を早く終わらせる、残業時間を減らす為にどうするか?
これも、答えは簡単です。
休憩時間を減らすのです。

最近は、業務の見える化などを行うために、業務を変更するたびに、業務内容を変更するシステムが導入されている現場が増えてきている事でしょう。

ただ、システム上、休憩にしたとしても業務を続けていてもばれる事はありません。
なので、表面上は、労働基準法を守ってはいても、実は守っていない事は多々あります。

これらにより、実際は守られているようで守られていない現場は多々あります。

よくトラックドライバーのXの呟きの中で、フォークリフトオペレーターが休憩時間に入って、荷物の積み下ろしをしてくれないというものを見ますが、もしたら、休憩時間を取らなくてはならない状況なのかもしれません。

ただ、トラックドライバーとしては、そんなことを知らないので文句を言っている可能性もあるのではないかと思います。

倉庫の仕事は、トラックの荷物の積み下ろしだけではないのです。
休憩を取るときに取らないと取れない場合も多々あります。

トラックドライバーが見ている、知っている倉庫の作業は、ほんの一部に過ぎないのです。
また、作業者に人員の余裕がある場合もあれば、無い場合もあります。
そして、倉庫によって、倉庫内の業務の流れは、様々です。

倉庫と言っても、やることは同じような流れであっても、すべて同じという事は絶対にないのです。
そういったことを知ろうともしない、知らないにも関わらず、倉庫をすべて一緒くたにするのは、正直、視野が狭い、思考が硬直しているとしか言えません。

また、黄金のペットボトル(尿入り)を捨てるようなモラルに欠けているトラックドライバー
https://www.tokai-tv.com/tokainews/feature/article_20240708_35158https://www.fnn.jp/articles/-/731049)がいるように、態度が悪い、挨拶をしない、愛想が無いといった倉庫作業者も様々な人がいます。
にも関わらず、すべての倉庫作業者の対応が悪いと決めつけるのもおかしなものです。

話を戻しますが、もちろん、残業時間や休憩時間をしっかりと守っている企業は多くあります。
ただ、守るがゆえに他の他の作業者に負担しかける場合が多々あるのです。

月末になるほど、時間の制約を受ける作業者が多くなれば、その人が行なっていた作業を余裕のある作業者に割り振らなくてはなりません。

割り振られた作業者にとっては、給料が上がらないにも関わらず、「余分な仕事が増える、負担が増える、労働時間は長くなる」としか受け取らない可能性があります。
それが、正規雇用の正社員ではなく、非正規雇用のパートや派遣社員であれば尚更です。

そして、倉庫現場作業者は、多くのパート、派遣社員、スポットワーカーで成り立っているのが、今の時代です。

言ってみれば、正規雇用の正社員の労働時間規制を守ることが出来るかどうかは、代わりに作業をしてくれる作業者がいればこそなのです。

スポットワーカーは、基本的に指示をされた作業しか行うこちが出来ませんし、キッチリと時間が決められています。
パートも人によっては、家庭の事情で残業ができない人もいます。

なにより、フォークリフトを乗る必要がある作業の場合、代わりができる作業者が限られます。

そうなってくると一部の作業者に負担がかかります。
もちろん、一時的なことであれば我慢できるかもしれませんが、毎月、同じようなことの繰り返しであった場合、嫌気がさして辞めてしまう場合もあります。
そうなった場合、残った作業者に負担がさらにかかります。

そうなってしまったら、負のスパイラスに突入です。
今の時代、フォークリフトを乗りなれている人は入ってきません。
さらにいれば、入ったとしても、長続きするとは限りませんし、1つの作業しか出来ない、やらない、周りの状況を見て動けない場合もあります。

そうなった場合、猫の手状態で1人分の作業ができるか出来ないかの状態になってしまいます。
フォークリフトの仕事は、荷物の積み下ろし、格納作業、倉庫内の整理整頓、商品の移動など多種多様です。
そのうちの1つの作業しか出来ない、やらないフォークリフトオペレーターは、1人分の作業は出来ないに等しいのが私の考えです。

フォークリフトオペレーターは、多能工化されるべきである、多能工化してこそ、1人分の作業を行なっているとみなすべき出来です。

話が逸れましたが、倉庫現場作業者の労働時間は、タイムカードにより目に見えているようでブラックボックスなのです。

そのブラックボックスの中身は、作業の負担を周りに振っているだけなのです。
それも、作業内容によっては、一部の作業者に負担をさせているのです。
しかも、正規雇用の正社員ではなく、非正規雇用の作業者に。

これは会社都合で現場作業者を使い倒している証拠ではないかと考えます。
ただ、こういったことは、表には絶対に出ません。

トラックドライバー以上に、倉庫作業者は、残業代がなくては、生活が成り立たないほど給料が安いからです。

もし、残業代が無ければ、役職の無い正社員の作業者であっても毎月の給料は手取りで20万円を切るでしょう。
もちろん、ボーナスもありますが、手取りで30万円もありません。

倉庫作業者の労働時間規制は、まったく話題にはなりませんが、それは、非正規雇用の作業者が頑張っているだけに過ぎないのです。

そのことを、誰も、どこも、報道、記事にしないのは、なぜなのでしょうか?

報道されて、記事にされるとしたら、スポットワーク、スポットワーカーによる利便性ばかりです。
その裏にある氷上の上を歩いているような倉庫現場の危険性を見て見ぬ振りをしているのです。

2024年物流問題。
トラックGメンとか、標準運賃の推奨などさまざまな活動をしているけど、それは物流を繋ぐ運送・運搬の部分だけの対策。

物流においては、出入り口を繋ぐ部分のみの対策。

そんな部分最適に重点を置いた対策ではなく、本丸は全体最適を行うための対策。

その為には、倉庫内の全体最適化こそ、メスを入れるべき。

そうしなくては、物流のボトルネックとなる倉庫の問題は残り続けて、いつまで経っても人海戦術、アナログ作業をし続ける。

そして、倉庫内の作業者は、どんどん非正規雇用者が増え、その場しのぎで継ぎ接ぎだらけで、まとまりもなく、単純作業に成り下がり、生産性は一定以上は上がらず、時代から取り残されていく。

ただ、時代に合ったシステム・設備を導入している倉庫は、どんどん先に行き、倉庫の労働環境、労働時間格差が広がり、人材の質の格差も広がって、それに伴い正社員の作業者の収入格差も広がっていく。

もうすでに、その格差は始まっていると言ってもいい。

誰が好き好んで、空調管理をしていない倉庫内で、8時間も働きたいだろうか?

しかも、最低賃金で。


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