目的と目標 本田宗一郎氏からの学び

コーチングおける目的と目標は意味合いが少し違う。

目的は、自分にとって大切にしたいモノ。それをする事によって、充実した幸せな人生を送れるもの。

目標は、目的を達成する為の中間地点の目印にすぎない。

この中間地点を設定していないと、現状の把握できず、このままでいいのか不安になる。

マラソンで言えば、目印の場所を決める事により、ゴールまでの距離を把握する事が出来、それにより全体が把握する事が出来る。

目標を設定して頑張っている人は多いと思うが、目的を明確にして、それに合わせて目標設定している人は、どれだけいるだろうか?

目的を明確に持っていないと、目標を目的と勘違いしてしまう場合がある。

そうすると、目先の事(場所)しか目に入らず、人生全体から見た場合の目標設定が出来ない。

カーナビで言うと、目的地を設定しないで、立ち寄り場所だけ設定した状態になり、いつまでたっても、自分が行きたい場所には行く事が出来ない。

立ち寄り場所を設定するにも、目的地を設定する事により、立ち寄り場所(目標)を効率良く回り、最短で目的地(目的)に辿り着けるようになる。

とは言え、人生の目的なんて、すぐに見付けられるものではないと思う。

世の中には、メジャーリガーのイチロー選手や松井選手のように子供の事から明確(ただ、このお二人は、メジャーリーガー・プロ野球選手になるのは、目標であり、目的は別に明確にしているはずである)にして、頑張って今に至っている人達はいるが、それは数少ない人達だろう。

一時期流行った、”自分探し”と言う言葉。

これは、どうやって自分を探すのだろうと疑問に思う。

自分の事は、自分がよく判っているはずである。

仕事は、やってみないと自分に合っているかどうか判らないとよく言われる。

仕事を続ける事により、自分でも気が付かない自分に気づく事により、自分の内側を見つめる事が出来る事により、”内側への自分探し”が出来るんじゃないだろうか?

コーチングの三大理念の中の”人生の答えは、自分の内側に持っている”とあるように、”内側への自分探し”は、自分の内側に目を向ける事で、自分の中から答えを探す事になる。

その探し出した答えに対して、目標・目的設定をし、それに従って行動を起こす事が大切であると思う。

目標や目的を明確に判っている場合、仕事を変え、環境を変える事は意味があると思うが、そうでない場合は、外的要因を変える事だけでは、まったく意味のないモノではないかと思う。

宗一郎氏は、世界一を目指していたが、これはあくまでも目標であって目的ではない。

F-1への参戦・優勝も目標の一つに過ぎない。

その根底にあるのは、「人間尊重」である。

世界一を目指すと言う事は、世界水準の技術を持つと言う事である。

その為に、海外の最新の工作機械を輸入し、製品の精度を上げるとともに、加工工程軽減、従業員の健康管理に気を使い、活き活きと活躍出来る職場を心掛けた。

社長を辞した後の事だが、宗一郎氏は、「うちの社員でありながら、俺の顔を見た事がないのが大勢いるんだ。ことに地方の出張所やSFと言うサービス機関の社員とかね」と従業員全員に握手しながら日本全国を回った。

「本当は、現職にいる時、うちの社員と名のつく人に全部会って握手してやりたかった。社長を辞めて、やっとその念願を果たす事が出来た」とも宗一郎氏は言っている。

従業員が数万人を超える企業の経営者でありながら、従業員全員に会うために行動出来るのは、宗一郎氏にとっては、従業員は息子であり、家族であり、一緒に目標に向かっていく大切な仲間と思っていた証だろう。

安全に対して、宗一郎氏は「安全なくして、生産なし」と言っている。

安全なクルマを作るにはどうするべきかと言う事に対しては、宗一郎氏は、「ちょっと道を走らせてみて安全だ、などと言うのはおかしい。レースのおかげで、うちはものすごく色々と教わった。それも、一年や二年じゃあ、効果は上らねぇ。レースにレースを重ねて、だんだんと積み重ねていったんだ」と言い、「時速300kmで走っても安全で壊れねぇクルマ作りを目指せば、量産車でもお客さんに安全なものを提供出来るだろうが」とも言っている。

世界レベルのレースに参戦しているからこそ言える言葉だと思う。

これは、F-1を「走る実験室」と考え、レースで得たノウハウを市販車レベルで活用出来るように落とし込む事で、技術者のレベルもあがり、全体の活性化につながる。

F-1に参戦したのは、確かに宗一郎氏の夢でもあるが、モータースポーツの最高峰に位置するだけに、そこで優勝すると言う事は、世界トップレベルの技術を持っていると証明出来る。

宗一郎氏は、常にお客様の立場に立っての視点を持っていた。

「一番長い事付き合わなきゃならねえ人の事を考えろ、一番長いのはお客さんだろ」と言い、「その次は売った店の修理工だろう。その次が、うちの工場の人間だ。作り出した本人のくせして、一番短いの設計者だ。ずっと使う人の身になって考えたら、不親切なものなぞ設計出来ねえはずだ!」とも言っている。

常にエンドユーザーの事だけを考えるのではなく、そこまでに関わっている人達の事も視野に入れているのは、顧客満足度だけでなく、従業員満足度までを考えているのは、当時の経営者の中では、数少ない一人だと思う。

 

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