「6月15日から行われる荷役作業・附帯業務の記録義務付け」による長時間労働の是正に繋がるかは疑問しかありません!

「6月15日から荷役作業・附帯業務の記録義務付け」がされます。

国土交通省・報道発表資料より(https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000184.html

トラックドライバー長時間労働の是正・コンプライアンスの確保を図るため、荷役作業・附帯業務は、記録の義務付けを開始します。
~中型トラック以上に記録が義務付けている記載対象の拡大~

本年6月15日より、トラックドライバーが車両総重量8トン以上又は最大積載量5トン以上のトラックに乗務した場合に、集貨地点等で荷役作業又は附帯業務を実施した場合についても乗務記録の記載対象として追加します。

これにより、トラック事業者と荷主の協力によるドライバーの長時間労働の是正等への取組みを促進します。


1.背景
トラック運送業ではドライバー不足が深刻化しており、我が国の国民生活や産業活動を支える物流機能が滞ることのないようにするためには、ドライバーの長時間労働の是正等の働き方改革を進め、コンプライアンスが確保できるようにする必要があります。


今般、こうした状況を踏まえ、拘束時間に関する基準の遵守など安全面、労務面でのコンプライアンスの確保や、取引環境の適正化に資するよう、荷役作業等に関する実態を把握し、そのデータを元にトラック事業者と荷主の協力による改善への取組みを促進すること等を目的として、貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成2年7月30日運輸省令第21号)を改正し、既に乗務記録への記載対象であった荷待ち時間等に加え、荷役作業等を記載対象とします。


2.乗務記録への記録対象として追加する内容
(1)対象車両 
車両総重量が8トン以上又は最大積載量が5トン以上の車両に乗務した場合
(2)対象作業 
[1]荷役作業(例)積込み、取卸し 
[2]附帯業務(例)荷造り、仕分、横持ち・縦持ち、棚入れ、ラベル貼り、はい作業
※ 契約書に実施した荷役作業等の全てが明記されている場合は、所要時間が1時間未満であれば荷役作業等についての記録は不要です。

20年以上、倉庫業務を行い、長距離トラックへ積み込みなどをして、
多くのトラックドライバーと接してきた私としては、
記録の義務付けがされても、何も変わらないとしか言いようがない。

最大の理由は、
荷物の積み降ろしが出来る状況が作られていると言うのが前提となっているから。

準備が十分に出来ていなければ、
トラックドライバーがどんなに頑張ろうとも労働時間は短縮されない。

企業などにもよりますが、
付帯業務となるの「積込み、取卸しなどの荷役作業と荷造り、仕分、
横持ち・縦持ち、棚入れ、ラベル貼り、はい作業」などを準備をするのは倉庫作業者。

本当にトラックドライバーの長時間労働の是正をするのであれば、
トラックドライバーの記録義務だけでなく、倉庫作業者に対しても記録義務付けをする必要がある。

トラックドライバーだけの記録義務では、出口だけの行動を記録しているに過ぎません。

そして、
“対象車両は、車両総重量が8トン以上、
または最大積載量が5トン以上の車両に乗務したトラックドライバーに対して”とありますが、
これに関しても対象が曖昧。

本来であれば、
常用便・定期便といった固定のドライバーが運行するのか、
単発的なドライバーが運行するのか、
どのような商品を扱うのか、
手積み・手降ろしなのか、
パレット積み・パレット降ろしなのか、
など詳しく定義しなくては、正確なデータは取ることは出来ない。

そして、トヨタなど大手メーカーの場合、
運行管理はしっかりしているので、このような記録義務をつける以前に、
自社で既に行っている場合がほとんどです。

長時間労働で問題になっているのが、下請け業者や孫請け業者。
こういった業者は、単発的な仕事が多いので、
初めて扱う商品、初めて行く企業と言ったどのように積めばいいか、降ろせばいいか分からないなど、指示待ちや考えながら行動するので、自然と長時間労働になる可能性が高くなります。

実際、私はフォークリフトを使って、
長距離トラックに積み下ろしも行ってきましたが、
正直、単発的に来るドライバーに対して積み下ろしの指示は手間がかかりました。

そうなってくると、時間的余裕がない場合は、
指示をする時間が取れず、自然と積み下ろしの待ち時間が長くなってしまいます。

そして、ドライバーごとにスキルレベルや経験値が違うので、
一概にすべて任せることが出来ないのが実情。

このような事は、
実際、長距離トラックの積み下ろし、
さまざまなドライバーと接していないと長時間労働を是正する対策は見えてこないはずです。

その為、今回の記録の義務付けの拡大は、
現場経験の少ない人が考えたものとしか思えません。

本来であれば、
中小企業の倉庫業務の現場の経験者を交えて、対策を考えるべきなのですが、
残念ながら、倉庫業務の現場の作業者はこういう事には無関心なのです。

なぜ、無関心なのか?

倉庫の現場作業者は、倉庫の中で仕事が完結するので、
長距離トラックによる荷物の輸送は、自分の仕事とは捉えていないのです。

また、長距離トラックによる荷物の輸送は、
下請けや外注と言った別会社が行うので、
自分たちの仕事の延長とも捉えずら傾向にあります。

それらの理由から、
長距離トラックドライバーの長時間労働に対する問題は、
倉庫作業者は自分ごとと捉えづらい為、無関心になるのです。

特に中途半端な規模の倉庫ほど、
1人でさまざまな倉庫業務を掛け持ちをしているので、記録をつけたところで、
何の解決策も見出せ無いのが現状。

更に言えば、現場で働く人間の倉庫業務スキルレベルが低すぎるがゆえに、
業務の改善も進まないし、作業の効率化による人手不足も解消しない。

ただし、大手メーカーの倉庫は、例外。
大手メーカーの倉庫は、キッチリとした教育・スキルアップをさせているので、
今回の記録の義務付けにより、
倉庫業務の見える化が行えて、さらに業務の改善が進むはず。

問題なのは、今だに倉庫業務は、
誰にでも出来る体力勝負・単純作業と思い込んでいる
中小の倉庫業務請け負い企業。

そう言った思い込みがあるからこそ、
倉庫業務に関するスキルアップには予算を出さない。

もちろん、経営的に出せないという状況でもありますが。

このようなことから、
私の20年以上の現場の経験から言えば、
今回の記録の義務付けは、形だけで終わり、長時間労働の是正には繋がらない。


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